鈴木知事はまず「例年11月になると人身被害が減っていくが、今年に限っては出没が衰えを見せない。いまだに街の中心部に出ているのは異常な事態」と現状を語る。
凶作になると山菜採りの人が山で被害に遭うようなことはあったが、一昨年に70人という人身被害が出て、「こんなところにクマが」という状況になったという。
現在、秋田市では2人1組、4班体制で朝から日暮れまでパトロールしており、土・日曜日も交代で出勤している。市の担当者は「職員の疲弊は限界に来ている」と話す。
横手市では、クマ対応の業務に取られ、森林や林道の整備作業が圧迫されているという。県内の自治体はどこもクマ対応に追われ、通常業務に支障が出始めている。
人員不足をテクノロジーで補う方法もある。例えば、ドローンによる監視・パトロールは有効だ。しかし、ドローンは市街地で飛ばすことは禁止されており、鈴木知事は「国に規制緩和をお願いしたい」と望んでいる。
多忙を極める行政の現場をさらに悩ませるのが、心ないクレームだ。鹿角市の担当者は「クレームはほとんど県外からで、無理難題を言われることもあり、毅然とした対応を心掛けている」という。
「先月半ばからの数字だと、県庁にも770件のクレームが寄せられている。半分は批判で県外からが多い。クレームは同じことを長時間も話す傾向がある」(鈴木知事)
クマの出没の底流にある原因の一つに人口減少が挙げられる。人が減って家がなくなるとクマが近づき、放置された田畑はクマの隠れ家になるからだ。人口増減率で秋田県は全国で12年連続ワーストである。
鈴木知事は「人口減少には、出生率の問題である『自然減』と都会に流出する『社会減』がある。自然減は国として取り組む部分が大きいが、県としては社会減の対策を強化している。エネルギーや脱炭素などの新しいビジネスにより農山村でも収入源が得られることを周知して、都会から若者をUターンさせたい」と話す。

