東武鉄道と日立製作所が共同で展開する生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」の機能がさらに拡充した。これまでの指静脈認証に、新たに顔認証が追加された形だ。財布もスマホも持たず、電車に乗ったり買い物したりする「手ぶら社会」の実現を目指す。オフィスの入退室もそうだが、生活のあらゆるシーンが「顔パス」でできるようになる。
その目玉が、今回の顔認証に対応した電車の改札口だ。交通系ICカード「PASMO(パスモ)」定期券利用者が対象で、サクララのアプリで顔写真を登録して利用する。通過する際はカメラで顔を認識し、定期券の保持者かどうかを識別して扉が開閉する。
サクララは昨年4月、指静脈認証を使った決済サービスからスタート。現在は東武ストアなど約30店で利用可能でき、今年11月までに約1万人以上の利用登録者がいる。今後は「指」と「顔」の二刀流で利用できる場所を拡大していく。
顔認証は他の鉄道会社でも導入事例はあるが、専用改札を設置するケースが多い。東武鉄道は当面、改札手前に専用タブレットを配置し、来年春以降はカメラ内蔵型の改札機に順次切り替える。
鉄道各社は改札の維持費用の負担低減を目指して、多様な運賃支払いシステムを試行している。今回のサービスのメリットについて東武鉄道の竜江義玄執行役員は「鉄道のみならず沿線の百貨店など、流通業を含めて展開が広がればさらに便利になる」と期待する。
日立製作所の石田貴一事業部長は、指と顔の認証方式の使い分けについて、「指認証は厳格な認証ができるので、本人の意思をしっかり確認することもできる。顔は広く認識されているので、使うハードルが低い」と話す。
顔認証の店舗決済は、国内シェア約50%を占める決済端末「JET-Sシリーズ」との連携で、店側が簡単に導入できるようになる見通しだという。
サクララはスマホから簡単に登録でき、店側は現在クレジットカードの決済などに使用されている端末にアプリをダウンロードするだけなので、全国に広がるスピードは早いかもしれない。顔認証決済のサービスは来年春の開始予定だ。

