まず、ガソリン暫定税率とは何か。ガソリン税は「揮発油税」と「地方揮発油税」を合わせた総称で、1952年の道路法の全面改正から徐々に創設された。現在は1リットルあたり合わせて53.8円が課されている。ガソリン税はもともと道路整備のための特定財源で、1974年に財源不足などを理由に税率の上乗せが始まった。
当時、この上乗せはあくまで暫定的だとしていたことから、「暫定税率」と呼ばれてきたが、道路財源の確保を理由に上乗せはその後も続いた。そもそも“暫定”と言いながら、51年間も続いたこと自体おかしい。臨時ではなく“恒久財源”になってしまっていた。今回の「暫定税率廃止法案」は、53.8円のうち、本来の課税額に上乗せされた25.1円を廃止するという内容だ。
今回の法案は、与野党の実務者協議で代替財源や減税の影響について議論しながら進めていくとされる。野党は11月から減税を実施したいとするが、与党側はこれに難色を示している。先の通常国会でも野党7党が法案を提出して衆議院では可決されたが、参議院では開始時期などに反対する与党側と折り合わず、廃案となった経緯がある。しかし、参院選で与党が大敗して参院でも少数与党となったため、もはやこれ以上は抵抗できない。
与野党の実務者協議で話し合われる最大のテーマは代替財源だ。とくに、地方揮発油税の部分では、地方自治体の税収が減る。ただでさえ独自財源が少ない地方自治体は、この部分を不安視している。
政治評論家の田崎史郎氏は「協議会に野党は政調会長が出てくるが、自民党は税調会長の宮沢洋一さんが出てくる。宮沢さんは税制のプロ中のプロでレベルが違う。野党が宮沢さんを説得できるかどうか」と法案成立の行方を推測する。
経済評論家の加谷珪一氏は「暫定税率の減税分は1.5兆円程度なので、国の予算120兆円のなかで調整できるレベル。それよりも、減税により企業の配送コストが減り、企業の賃上げも可能になる。賃上げは消費拡大につながる」と経済効果を強調した。
実際のところ、暫定税率廃止でガソリン代はいくら浮くのか。例えば、1回50Lの燃料タンクをレギュラーガソリンで満タンにすると、これまでは1リットル174円×50L=8700円かかっていたが、暫定税率廃止後は1リットル149円×50=7450円と、1250円浮くことになる。
加谷氏が指摘するように、運送コストに代表される社会経済に与える影響は非常に大きい。それだけに、与野党協議体の議論の行方が注目される。