選択的夫婦別姓を巡っては、国連の委員会が昨年10月に、夫婦同姓を定めた日本の民法について改正勧告を出している。実に4回目の勧告だ。先進国としては恥ずかしい限りで、もはや国際問題と言っても過言ではない。国内でも経団連が昨年6月、「選択的夫婦別姓の早期実現を政府に求める提言」を初めて発表した。十倉雅和会長(当時)は「女性活躍が進み女性役職員も増加する中、名字の問題はビジネス上のリスク」と話した。
8日放送のテレビ朝日「モーニングショー」では、法案審議が行われたにもかかわらず、なぜ国会で決められなかったのか解説した。
「自民党には賛否両論あり、保守系の慎重論が根強く、法案提出を見送った。石破総理も『党議拘束を外すことも選択肢の1つ』と言ったが、それすらも強硬に反対する議員がいて、秋の臨時国会への継続審議となった」(毎日新聞専門編集委員・佐藤千矢子氏)
この制度の肝は“選択的”という部分。選択的夫婦別姓は言い方を変えれば「選択的夫婦同姓」ということだ。同姓にしたいカップルは同姓にすればよいだけのこと。「同姓が良いという人は、別姓が良いと考える人の自由を奪っている状況だ」(コメンテーター・玉川徹氏)
多様性のある社会を認めるのか、認めないのか。選択的夫婦別姓というテーマは“リトマス試験紙”のような役割になっている。
9日、参院選に出馬している山尾志桜里氏は、街で出会った小学5年生から「政治家にやってほしいこと」として、「女性天皇と選択的夫婦別姓」と言われたとX(旧Twitter)に投稿した。これにはさまざまなツッコミが殺到して、「小学5年生」がトレンド入りする事態にもなった。しかし、ここまで過剰に反応する人が多いというのは、裏を返せば、このテーマが参院選でも大きなテーマであることの証左だ。
今回の参院選の結果は、秋に開かれる臨時国会の議論を大きく左右する。選択的夫婦別姓に明確に反対しているのは、保守党と参政党だけだ。維新は他の野党とは異なり「旧姓使用しやすい法改正」を提案している。与党の公明党が賛成しているので、選択的夫婦別姓制度の実現は、自民党次第とも言える。
前述の通り、自民党内の意見は分かれており、候補者個人を見ないと判断できない。ただ最近では、賛否を答えない「無回答議員」も目立っている。自民党の古くからの支持母体(神道政治連盟など)が反対していて、はっきりとした態度が取れない議員が増えているためだ。
有権者は、情報リテラシーと“人を見る目”が試されている。