「これからどうなるか。まったくの未知数で、稀勢の里がいなくなったのは本当に痛い」(協会幹部)
つい数年前まで、大相撲界はトラブル、不祥事が相次ぎ、その影響で入場券の売れ行きもさっぱり、という冬の時代にあえいでいた。このままいけばまた不人気時代に逆戻りするのは必至。
いかに“稀勢ロス”を最小限にとどめるか…。八角理事長の手腕が問われることになりそうだ。
もう1つの心配は、稀勢の里の今後の身の振り方だ。引退して「荒磯」を襲名した稀勢の里は、しばらくは部屋付き親方として引退相撲などの準備に追われることになる。そして来年前半にも分家独立して荒磯部屋を興し“第二の稀勢の里作り”に乗り出すことになる。引退会見で「どんな力士を育てたいか」と問われた稀勢の里は、こう話した。
「一生懸命相撲を取る力士、そして、けがに強い力士。そういう力士を育てたいと思います」
稽古一途で横綱に駆け上がり、ケガに泣いた稀勢の里らしい意気込みだが、問題は稽古場の外にある。
「19年ぶりに日本人として横綱になり、カリスマ的な人気を誇っただけに、周りの親方たちが放ってはおきません。相撲協会の勢力争いに担ぎ出され、『やれ理事だ』『理事長を目指せ』となるに決まっています」(前出・担当記者)
その前例が元貴乃花親方だった。中卒のたたき上げで絶大な人気を誇り、晩年はけがに泣き、多くのファンに惜しまれながら引退するなど、貴乃花と稀勢の里には共通点が多い。ともに二所ノ関一門でもあった。
このため、血気盛んな若手の親方たちにあと押しされて一門を飛び出し、若くして理事になった貴乃花。だが、その後は様々なトラブルを引き起こし、最後は相撲協会を退職したのは記憶に新しいところ。果たして、稀勢の里は大丈夫か。
「そうでなくても、曙以降、9人中5人もの横綱が大相撲界を離れ、横綱経験者が極端に少なくなっているだけに、祭り上げられる可能性は高い。ジッとしていれば、次の次あたりの理事長にもなれる素材なんですがね」(協会関係者)
土俵を去っても、稀勢の里改め荒磯親方から目を離せない。