椎名は和装で登場し、1999年リリース「丸ノ内サディスティック」など自身の代表曲を熱唱。ステージがヒートアップするなか、映し出された観客席は旭日旗に酷似したミニフラッグを一丸となって振るファンたちの姿があったのだ。
旭日旗は、旧日本軍の軍旗、旧日本海軍の軍艦旗で、第二次世界大戦で日本の帝国主義及び軍国主義の象徴的モチーフとなったもの。1954年に防衛庁・自衛隊の発足に伴って陸上自衛隊の自衛隊旗、海上自衛隊の自衛艦旗として使用されているが、“軍国主義を彷彿とさせる”などとして、旭日旗のイメージはネガティブな考えを持つ人は少なくない。
椎名のステージで熱狂するファンが旭日旗を模したミニフラッグを振る姿はSNSでも大きな物議を醸し、「権威的なものが大好きな人というイメージしかない」「この光景は不快でならない。とくにこの時期には見たくない」「戦争を知らない世代が冷やかし感覚で旭日旗を振るな!」といった拒否反応を示す声が後を絶たない。
椎名といえば、販売するグッズが独特でこれまでも幾度と物議を醸し、なかには販売を延期せざるを得なかったこともある。今回の旭日旗をモチーフにした商品が初めて販売されたのは2008年のこと。冒頭のステージで話題になった旭日旗は2014年もしくは2018年のツアーグッズで販売されたものとみられる。
さらに、2022年にはCDの特典となるカードケースが“ヘルプマーク“をモチーフとなったデザインだと批判が殺到し、マークを作った東京都が販売元に対応を求める騒動になった。結果的に、販売元のユニバーサルミュージックがホームページ上で「グッズのデザインを変更し、CDの発売を延期する」と発表した。
「当時、話題性が強かったことから興味本位で椎名のグッズを手に入れる若者が急増しました。ヘルプマークを使っている高校生が見知らぬ男から『それ椎名林檎のグッズ?』と訊かれた出来事がネットニュースで話題になったり、NHKや民放各社もニュースで取り上げるなど、事態が大きくなってしまったのです。また、見解を表明しなかった椎名の態度も不信を招きました」(音楽関係者)
その一方で、椎名は2020年に演出振付家のMIKIKOらがクリエーティブ・ディレクターを務める「東京2020オリンピック・パラリンピック」開閉会式総合演出チームの一員に選出されたが、新型コロナウイルス感染拡大を受けた演出の見直しに伴い解散。その椎名があえて、旭日旗やヘルプマークをモチーフにするのだから、何らかの意図があることはたしか。今後の活躍にますます目が離せない。