赤澤亮正経済再生担当大臣がNHK「サタデーウオッチ9」に生出演して、交渉の裏側を語った。
まず、日本側の最大5500億ドルの対米投融資について、赤澤氏は「出資、融資、融資保証を合わせて5500億ドルで、政府系金融機関が枠を作る。このうち、利益の分け方が問題になるのは出資で、出資は1~2%くらい」との見通しを示した。さらに、日本側は当初、利益配分を50%ずつで提案したが、最終的にアメリカ側90%まで譲歩したと説明した。
トランプ大統領はSNSで「日本が80兆円を投資しても、利益の90%はアメリカが取る」と発言しており、この言葉は一見すると挑発的で日本側の損失を強調するように聞こえるが、日本が心配するような損失額でないことを赤澤氏は強調した。大統領の発言はアメリカ国民(というよりトランプ支持者)向けに成果をアピールしたものと考えたほうが良さそうだ。
赤澤氏によれば、アメリカ側が当初設定していた関税率25%を15%に引き下げることで回避できた損失は10兆円にも及ぶが、利益の取り分で譲って失ったのは「せいぜい数百億円の下の方だ」という。だとすれば、日本のメディアの報じ方はかなり問題だ。
野党と与党内の一部からは「合意文書がないのはおかしい」との声が上がっている。それに対し赤澤氏は「われわれがとにかく先にやってもらうべきことは、一刻も早く合意内容で大統領令を出してもらうこと」だと反論した。
一般論では、確かに野党らの言い分が正しい。しかし、今のトランプ政権は、国家間の合意文書を議会で批准して発効するという当たり前の手法を取っていない。なので、合意文書作りに時間をかけていると合意内容そのものが変わってしまう可能性もあり、赤澤氏の主張に理があると言える。
今回の日米合意、経済界はどう見ているのか。経団連の筒井義信会長は「交渉の結果は見事に実を結んだ」と評価しながらも「GDP成長率に及ぼす影響はそれなりに大きい」としている。野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は「GDPは1年程度で0.55%押し下げ」と試算している。
ベッセント財務長官は「四半期ごとに評価して大統領が不満なら関税率25%に逆戻り」と発言しているが、日本側としてはトランプ大統領の“感情”に配慮する場面が続きそうだ。