トランプ政権は4月に世界185カ国に対して相互関税を発表したが、日本には24%の相互関税率を示していた。その後、相互関税の上乗せ分(日本に対しては14%)は90日間の一時停止となり、その期限が7月9日に迫っていた。
8日放送のテレビ朝日「ワイド!スクランブル」で、ワシントン支局の箕輪適記者がトランプ氏の狙いについて「4月に発表した相互関税の一時停止期限を延長してできるだけ多くの譲歩を引き出したい考え」と説明した。4月に提示した税率24%を上回る25%は、交渉の遅れへの不満とも見られる。箕輪記者によれば、米メディアは3週間の期間延長を「時間稼ぎ」と指摘しているという。
これに対し、日本政府と自民党は緊急の対策本部を開いた。テレビ朝日政治部の千々岩森生記者によれば、自民党では「手紙1枚での通告は同盟国に大変失礼だ」との声が広がったとのこと。ただ、総理周辺では「アメリカ側は『交渉しよう』という感じであり、それほどネガティブではない」としているという。
先週、ニューヨーク・タイムズは「日本はトランプ氏が長年不満に思う問題の核心とは無関係の譲歩を示し、誤算を犯した可能性がある」との厳しい指摘をしていた。日本政府は今後、これをどう受け止めて交渉していくのか。また、米メディアは相次いで「週内にもEUと暫定的な合意を目指して協調が進む可能性がある」と報じており、この合意が実現すると、残された日本にとってはハードルが高くなるおそれがある。
トランプ関税を巡っては、トヨタが「35%減益」という見通しを出すなど、日本経済に大きなリスクとなるのは間違いない。一方で、経済の専門家の多くが、日本経済のみならず米国経済にも大きなダメージをもたらすと指摘してきた。トランプ氏が関税政策を緩和しなければ、各国の投資マネーが米国から流出し、株安・債券安・ドル安のトリプル安に見舞われる可能性があるからだ。
ただ、現在までのところアメリカ国内で関税による物価の顕著な上昇は始まっておらず、各種の経済指標を見る限り、アメリカの国内経済は堅調だ。株価が急落した4月に比べトランプ氏がまだ強気でいられる理由はここにある。
7月8日の日経平均株価は、小幅に下落して取引を開始したのち、上昇に転じた。トランプ氏の発表に市場は静観しているが、今後株価が暴落するような局面があれば、ただでさえ参院選で苦戦が伝えられる与党の惨敗は確実なものとなる。石破政権が下野するのみならず、政権交代もあり得るだろう。