同局は今年1月、記者会見を開くも対象となるメディアを限定し、テレビカメラの撮影を禁止したため批判が殺到。この会見を受け、数多くの大手企業が同局でのCM打ち切りを表明する事態に発展した。同月、再び開催された会見は10時間にも及ぶ記録的な長丁場となり、事態は悪化の一途をたどった。
番組では、港浩一元社長や元アナウンス室長、被害女性の対応に当たったアナウンサー・佐々木恭子部長らのインタビューを通じて、一連の流れを振り返った。第三者委員会により指摘された“悪しき慣習”を象徴するような「性別・年齢・容姿に着目した会合」を取り上げ、港氏や元専務・大多亮氏などの関係者に事実関係を確認。すると、同局女性アナが大多氏から「女性アナウンサーは上質なキャバ嬢だ」との発言があったと証言した。
また番組では、「“日枝体制”の長期化」と題し、日枝久元取締役相談役の“独裁”についても検証した。日枝氏は、約40年にわたり同局の中枢にいた存在であり「院政を敷いている」との批判を集めた人物である。同局は3回の取材を日枝氏にオファーしたものの、応じなかったとした。
この件に関して、社長を経験した複数の元幹部は長年にわたって経営を率いた日枝氏が人事権を持ち続けたことが、ガバナンスが機能しなかった一因になったと指摘。前副会長・遠藤龍之介氏は「この人に逆らったら大変なことになってしまうのではないかという恐怖を持っている人だった」とし、「日枝氏が年を取ってくると役員・局長候補との年の差が開いていくが、本当にその人たちのことを分かっているのだろうかと思い始めた」と述べた。また、会見後には「あなたが辞めていただかないと収束しないのでは」と日枝氏に辞任を迫ったものの、「辞めない。お前は戦わないで辞めるのか」と告げられたとも明らかにした。
この放送を受け、SNS上では「トカゲの尻尾切りのように辞任した方々に全ての責任を押し付けて、フジテレビは完全に浄化されたとでも言いたげな構成」「これはフジテレビ側の言い訳番組」「本質を探ろうとする姿勢がまったく見られなかった」「スポンサー向けのアピール」といった厳しい意見が目立った。その一方で「清水氏は、これまでのフジテレビとは決別する意思が見て取れる」「悪しき風習を世間に公開した覚悟は社をあげた対応」「日テレの『プライバシー保護の観点』よりかはフジの方がよっぽどマシ」との“擁護”の声も見受けられた。
一時期は“ACジャパン”の公共広告への差し替えで、異様な光景に包まれたが先月25日、親会社の株主総会後から大和ハウス工業やサントリーなど一部の大手企業の間でCMを再開する動きが見られた。だが、実際のところは茨の道だ。
今回の懺悔番組をきっかけに、かつてのフジを取り戻したいところである。