スマートグラスは配達員が駐車すると自動で起動し、荷物のラベルを読み取り、届けるべき住所までの道順など必要な情報を端末に表示する。配達完了を証明する写真撮影も可能だ。そのため、配達時にスマートフォンなどを取り出して確認する必要がなくなり、作業効率が向上する。
現場の配達員数百人のフィードバックを反映して設計されており、度付きレンズや調光レンズにも対応している。将来的には誤配検知やペットの存在通知など、さらなる機能追加が予定されている。
倉庫から顧客の玄関先までの最終配達区間は「ラストワンマイル」と呼ばれるが、物流コスト全体の40〜50%を占めるといわれる。もっとも非効率で改善の余地が大きい領域でもある。
米アマゾンは1日に数百万個もの荷物を配達しており、配達員1人あたりの効率を数パーセント改善するだけでも、年間で数十億円規模のコスト削減につながるといわれる。配達員の負担軽減は人材確保・定着率向上にも直結する。
スマートグラスは現在、最終テスト段階で、米国で展開を始め、日本での導入時期は未定だ。ただ、日本でも物流業界の人手不足は深刻で、宅配では置き配ルール整備が政府をあげて進められている。
日経BPシリコンバレー支局の島津翔編集委員は、「物流の大部分を担ってきた移民への締め付けがトランプ政権で厳しくなっている。(移民以外の)アメリカ人に働いてもらえるようにアシストしているように見える」とアメリカの政治状況も影響していることを示唆している。

