カルロス・ゴーン氏の逮捕後に社長を務めた西川廣人氏の退任を受け、日産自動車の立て直しを図るために急きょ就任した内田誠社長にとっては、想定外の決算内容であったのだろうか。実は今回の決算についての見方は分かれている。
あるアナリストは「内田氏は就任早々から、膿を吐き出す経営を行っている。従来の拡大路線とは一線を画し、販売台数を稼ぐための値下げ販売の抑制、不採算工場の閉鎖などを手掛けてきたが、コロナ禍で想定外のダメージを受けてしまったようだ」と語る。
国内の自動車メーカーで赤字決算となったのは、日産自動車と三菱自動車。ともにルノーとアライアンスを組むグループ企業だ。
100年に一度といわれる大変革の時代に突入し、自動車メーカーは世界的な再編の波にさらされている。その中で、グループ内の企業が赤字を垂れ流しているとなると、グループの再編などもウワサに聞こえてくる。
ただ、ある自動車評論家は「日産自動車はコロナ禍とは関係なく、ずいぶん前から危機的兆候に陥っていました。末期のゴーン氏は、経営にはほとんど興味を見せずに、やる気のない姿勢が商品のライナップや車の魅力に表れていた」と語る。
日産は事業構造改革計画で、コア市場を中心として今後1年半の間に12の新型車を投入し、商品ラインアップの若返りを図ることを掲げている。
「かつて日産が元気だった時代を知る世代も、すっかり高齢化しています。今回の赤字決算が、経営方針を見直すいいきっかけになったのでは…」(同)
“ゴーンの呪い”を払拭できるか注目だ。