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北朝鮮 核ミサイル開発に邁進する「輸出入9割減」

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提供:週刊実話

 5月1日に竣工し、北朝鮮の金正恩党委員長が病身を押して竣工式に駆けつけた「順川リン酸肥料工場」に、ある疑惑が生じている。

「米国の研究機関によれば、北朝鮮は8カ所の生産工場でリン酸塩、アンモニウム、フッ化物、塩化物、硫黄など軍民両用の化学製品を製造し、これらを化学剤に転用しているという。韓国国防白書は、北朝鮮が現在保有している主な化学剤は、VXガスやサリンなどの神経剤、マスタードガスなどのびらん剤、ホスゲンなどの窒息剤、青酸などの血液剤など17種類で、生産量も2010年の2500トンから直近で5000トンに倍増していると報告している。また、リン酸肥料の原料は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の推進薬にもなり、同工場には複数の軍司令部や大講堂、研究所らしい施設があることから、多くの専門家はリン酸肥料だけを製造することが目的ではないとみています」(軍事アナリスト)

 正恩氏の視察映像を流した朝鮮中央テレビでは、あの独特のイントネーションを響かせ、重大放送にしか登場しない李春姫アナが、「偉大な正面突破思想が抱かせる自力富強、自力繁栄の創造物、順川工場の竣工式が盛大に進行した」と述べている。

 北朝鮮は昨年12月8日、東倉里の「西海ミサイル発射場」でICBM用の固体燃料型ミサイルエンジンの燃焼実験を初めて行い、これを成功させて米国を苛立たせている。順川工場が本格稼働し、ICBM用の固体燃料が大量に生産されれば、ミサイル本体を配備するだけでなく、製造した化学剤をICBMなどに搭載することもできる。

「当時、北朝鮮は『クリスマスのプレゼントに何を選ぶかは、すべてアメリカの決心にかかっている』と、好戦的発言を繰り返していました。要するに順川が自力富強、自力繁栄を可能する一大拠点だと自慢したかったのです」(同)

 順川工場の視察後、再び姿を消した正恩氏は、22日後の5月23日、朝鮮労働党中央軍事委員会の拡大会議に出席した。同会議は、北朝鮮の軍事政策をめぐる最高意思決定機関である。この場で正恩氏は「核戦争抑止力の強化」などを打ち出している。

「注目は『核戦争抑止力を一層強化させるための新しい方針』が示されたことです。北朝鮮が核戦力保持の意思を表明するのは、昨年12月に開かれた同会議以来のことで、一貫して核・ミサイル開発を重視してきたことをうかがわせます。その目的は米国に対する核攻撃能力を誇示して、トランプ大統領との非核化交渉を再開させ、制裁解除に結びつけることにある。とはいえ、トランプ氏は再選を狙う11月の大統領選挙に向け北朝鮮と向き合う余裕はありません。核戦力強化を鮮明にさせたのは、内部を引き締める狙いもあったとみられます」(国際ジャーナリスト)

 軍事的に注目されるのが、方針にある“戦略武力”の推進が何を指すのかだ。

「新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を指すのではないか。現在、東海岸の馬養島に潜水艦を建造する大規模な施設がありますが、実際に原潜やSLBM搭載型潜水艦を建造するとなれば、米国の偵察衛星に捉えられない場所で隠密に進めるでしょう」(北朝鮮問題専門家)

 次に“砲兵の火力打撃能力を高める措置”だが、こちらは短距離弾道ミサイル(SRBM)や大型ロケット砲と関係しているようだ。

「性能アップがおろそかになっていた在来兵器にも力を注ぎ始めた証拠で、韓国の首都ソウルを火の海にして、在韓米軍をも焦土化する局地戦を想定した動きです。最終的には韓国から米軍を撤退させるのが狙いでしょう」(同)

 ところが、対北融和路線を敷く韓国の文在寅政権は、軍事境界線付近の相互軍事力削減などで北朝鮮と合意してしまった。従って、局地的な武力挑発に断固たる態度で臨めるかは疑問だ。北朝鮮の度重なる挑発はそれ自体が合意違反であり、非難すべき対象だが、韓国軍の首脳が政権の顔色をうかがい北朝鮮への抗議を自制してしまっている現状では、日本の安全保障にも危機を及ぼしかねない。

 北朝鮮を脅威と捉える日本は、今年、防衛白書の素案に核搭載の中距離弾道ミサイル(IRBM)やレーダー網をかいくぐる低空飛行のSRBMなどへの備えを課題として挙げている。陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備など迎撃態勢の強化が急がれるが、日本の世論は先鋭化する北朝鮮の核武装に相も変わらず無関心だ。

 核・ミサイル開発に邁進する北朝鮮だが、一方で経済は新型コロナで壊滅的打撃を受けている。中国税関総署が発表した北朝鮮との’20年4月の貿易総額は、前年同月比90%減の約2400万ドル(約26億円)だった。コロナ対策のため国境を封鎖したせいもあるが、北朝鮮からの輸入額は約220万ドル(約2億4000万円)、輸出額は約2180万ドル(約23億6000万円)で、近年で最低レベルに落ち込んでいる。

 自国経済が困窮を極める中、正恩氏はいつまで強気の姿勢を貫けるのか。

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