まず、富士フイルムホールディングスは傘下の富士フイルム富山化学を通じてアビガンの増産を開始。同社の株価が跳ね上がったのは言うまでもない。
「アビガンは中国での感染者が服用して効果があったという中国政府の症例報告を受けた直後、富士フイルムの株価は急騰した。しかし、中国国内での物質特許が期限切れと分かり、一気に急落したんです」(証券アナリスト)
富士フイルム富山化学が保有するアビガン錠の有効成分であるファビラビルを保護する物資特許は、2019年8月で失効していたのだ。そこで5年延長の手続きを取ったことで富士フイルム株は再び急騰している背景がある。
「富士フイルム以外に株価が上がっているのが、アビガンの原薬生産をスタートさせた『カネカ』と、原料となる有機化合物・マロン酸ジエチルを供給する『デンカ』です」(兜町事情通)
カネカは疲労回復、老化防止、美肌効果などで話題になっているコエンザイムQ10の原料を生産している会社だ。4月中旬にアビガンの原料生産を始めると発表した途端、同社株は急伸。一時、制限値幅の上限ストップ高(4月17日、前日比+19%高)になった。
デンカは合成ゴムや電動車関連製品、検査試薬などを扱う会社で、4月3日に+24%高のストップ高になっている。
また、半導体部品関連企業や医薬品メーカー向けにクリーンルーム、隔離搬送用バイオセーフティーカプセルなど感染防止設備を展開する『日本エアーテック』も注目株だ。
しかし、医療ジャーナリストは、欲に目が眩んだ投資家らに皮肉交じりで警鐘を鳴らす。
「すでにアビガンは治験に入っているが、安倍晋三首相が5月4日の会見で、アメリカのカリフォルニア州に本社を置く世界第2位の大手バイオ製薬会社『ギリアド・サイエンシズ』の抗ウイルス薬・レムデシビルの特例承認を求める国内申請を行ったことを明らかにし、治療薬候補としてクローズアップされている。投資家の期待は水泡に帰すかもしれない」
果たして株価の推移やいかに。