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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★危険な賭けに出た安倍政権

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提供:週刊実話

 4月7日に政府が、東京都など7都府県に緊急事態宣言を発令した。ところが、早々に政府と東京都の対立が表面化した。政府は、2週間程度自粛の効果を見極めた上で、限定された業種に休業要請をする予定だったが、小池百合子都知事は速やかに、より幅広い業種に休業要請をすべきだと主張した。結局、休業要請を出す業種の範囲は理美容を対象から外すなど、政府と東京都の中間で妥協が図られ、東京都は11日からの休業要請に踏み切った。

 政府と東京都が対立する原因の1つが、感染実態への認識差だ。安倍総理は人との接触を7〜8割減らせば、コロナウイルスを収束できると言った。しかし、それは市中感染がさほど広がっていない場合だ。日本は大規模なPCR検査をしていないので、市中感染の実態が分からない。人口当たりの検査数で、日本はアメリカの14分の1、ドイツの29分の1にすぎない。

 私はテレビに出演した際に、感染症の専門家十数人にオフレコで「本当の感染者は何人いると思いますか」という質問を繰り返してきた。答えは、数千人と数十万人に二極化した。もし、数十万人というレベルに市中感染が広がっているとすれば、今回の自粛のレベルは、あまりに低すぎる。もちろん、市中感染が少なければ、自粛が功を奏して、収束に向かう可能性もある。

 ただ、市中感染が少ないことに賭けて緩い自粛を求めるのは、あまりにリスクが大きすぎる。安倍政権が行っていることは、橋の強度を確かめずに、国民に橋を渡らせるようなものだ。

 だから、いますぐ市中感染率を調べるべきだ。とりあえず、東京都で1000人程度の無作為抽出によるPCR検査をすればよい。安倍総理は1日2万件の検査体制を作ると言っているのだから、十分可能な検査数だ。PCR検査の拡大については、医療崩壊を招く懸念や、陰性の人を陽性と判定してしまうリスクから反対する人も多いが、市中感染率は高々1%だろうから、陽性と判定されるのは最大で10人だ。その程度で医療崩壊は起きない。調べるのは発症していない人だから、多くは入院の必要がない。また、陰性の人を陽性と判定する可能性とともに陽性の人を陰性と判定する可能性もあるから、おおよその実態は調査で分かる。

 どうしても、PCR検査が嫌なら、血液の抗体検査という方法もある。抗体ができるのに2週間くらいかかるから、タイムラグは大きいが、ある程度のことは分かる。実際、ロサンゼルスは4月10日から無作為抽出で1000人の住民を選び、抗体検査を開始している。今後、全米に広げていくという。抗体検査は、検査の際の感染リスクが小さいし、コストも数千円と安いから、ハードルは低いはずだ。

 いま東京都では、検査で陽性となった人の8割近くが感染経路が不明になっている。また、4月以降にPCR検査をした人の4割近くが陽性になっている。こうした傍証から考えると、安倍政権は勝ち目のないギャンブルに出ている可能性が高い。

 もし市中感染がとてつもないレベルに達しているなら、やるべきことはロックダウンしかない。武漢をロックダウンした中国は、2カ月半で封鎖を解除し、いま急速に復活しつつある。ずるずると自粛を続けるのは、最悪の選択なのだ。

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