「荒磯親方(元横綱稀勢の里)のことですよ。6月26日、弟弟子の大関高安との三番稽古(同じ相手と繰り返し行う稽古)で、なんと7勝6敗と勝ち越してしまったんです。驚いた周囲から、『これなら名古屋場所で復帰しても十分やれる!』の声が上がっているんです」(担当記者)
あの涙の引退から半年以上が経ち、荒磯親方は7月3日に33回目の誕生日を迎えた。それが、現役バリバリの大関を相手に、いきなり左四つがっぷりから2連勝するなど、現役時代と変わらない強さやスタミナを見せつけたのだ。
しかし、当の荒磯親方の最大の関心事は、自動車教習所通い。現役力士の運転は禁止されているため、荒磯親方も免許証を持っておらず、引退後にようやく教習所に通い始めたのだ。
番付の最高位を極めた元横綱も、ハンドルを前にしては新弟子状態で、悪戦苦闘しているという。
「大学生たちと机を並べて講義を受けているよ。片手運転をして、『ハンドルは両手で握りなさい』と教官に怒られました」と、苦笑いしながら明かした。
そんな愛すべき荒磯親方に、冗談でも“現役復帰待望論”が出るのは、それだけ名古屋場所の本命が見当たらないことの証でもある。
「名古屋場所も、誰が優勝するか分からない戦国レースになるのは必至です。2場所ぶりに復帰する白鵬には、もうかつてのような絶対的な強さはない。先場所、右ひざを痛めて途中休場した大関2場所目の貴景勝も、いまだ完治にはほど遠く、本格的な稽古ができない状態。そのほかの横綱、大関も年齢的な衰えが目立ち、とても優勝争いをリードする力はない。先場所は西前頭8枚目の朝乃山に優勝を許しましたが、今場所も運のいい力士、調子のいい力士が賜杯を抱くんじゃないか」(前出・担当記者)
荒磯親方に負け越した高安は、ここで優勝でもしないと、それこそ「ハイ、それまでヨ」となりかねない。