社会 2025年12月10日 08時05分
家族葬1日で224万円の請求 葬儀をめぐるお金のトラブルが多発
豪華な祭壇、高級な骨つぼ……。提示された金額は224万円。それも家族葬1日の費用だという。葬儀サービスで注文していないオプションを付けられたり、高額請求されたりするなど、国民生活センターに寄せられた相談は過去最多の978件(昨年度)。8日放送のNHK「クローズアップ現代」で解説した。年間の死亡者が160万人を超えて過去最多となり「多死社会」を迎えている。今は多くの人が病院で亡くなるが、亡くなったその日に病院からの移送を求められるケースも少なくない。家族が亡くなって気分が落ち込んでいるときに、時間がないためにネットで検索して葬儀会社を選ぶ人が増えている。しかし、広告に記載されていた金額と異なるケースがあり、「基本料金」に含まれないオプションが追加されるためだ。そもそも、葬儀の適正価格を把握している人は多くない。人生の中で葬儀を取り仕切る機会は1~2回しかないからだ。創業90年の葬儀会社代表は、ある会社の見積書を見て「市営斎場の場合、祭壇の無料貸し出しがあるにもかかわらず、料金を載せている。骨つぼが基本プランに入っているはずなのに上乗せされている」と即座に不可解な部分を指摘した。ただ、こうしたポイントはプロが見れば一目瞭然だが、一般の人が見ても分からない。その典型的な例の1つが「エンバーミング」だ。エンバーミングは、遺体の血管から薬液を注入して長期の保存を可能にする処置だ。高額な上に、ドライアイスで十分事足りるケースでも「このサービスは外せない」などと言われてしまうことがあるという。なぜ、葬儀をめぐってお金のトラブルが発生しやすいのか。大手葬儀会社の元社員は、新規参入の会社が増えて価格破壊が起きていることを指摘し、「古くからの大手は表の部分だけ安く見せて、オプションで価格をつり上げている」と話す。厳しいノルマを課して給料に直結させる会社もあるそうだ。葬儀業界の実情に詳しい国立歴史民俗博物館の山田慎也副館長は安心して納得できる葬儀を行うために次のようにアドバイスする。「できれば生前に本人を交えて家族で話すこと。家族葬の平均は約105万円で地域差もある。明らかに安すぎる広告には注意し、“◯◯一式”とある場合は必ず内容を確認すること」現在、半数以上の人が家族葬を選ぶようになっており、家族葬より簡略化した形式としては、通夜・告別式などを行わない「直葬・火葬式」がある。平均42.8万円程度で行うことができる。自治体が主体的に葬儀に関わる新しい取り組みも出てきた。大阪・高槻市では葬儀や火葬を担当する「斎園課」を設置しており、式の準備から進行までを専門の職員が担う。利益を上げる必要がないので、かなり格安だ。全国でも珍しい事例だが、住民から好評を得ている。