FA権行使の申請が始まった10月24日、阪神の谷本修副社長兼球団本部長が、つれない言葉を言い放った。
「今オフのFA? 極めて消極的です」
昨季はオリックスからFAとなった西勇輝を獲得した。その西がチームの勝ち頭で、ただ1人、2ケタ勝利を挙げたのも西だけとなれば、オフの“外部補強”は欠かせなくなるはず。
しかも、福留孝介、糸井嘉男の両ベテランはフル出場が見込めなくなり、精神的支柱だった鳥谷敬も退団した。FA市場でスラッガーを補強しないとなれば、トラの狙いは“新外国人選手”のみと見るべきだろう。
「それも、確実に戦力になる長距離タイプを獲得しなければ、矢野監督の立つ瀬がありません。気の毒ですよ」(球界関係者)
気の毒な指揮官…。しかし、FA、外国人の前に、補強できるタイミングはあった。ドラフト会議だ。
そこで阪神は6人を指名したが(育成除く)、1位から5位までが高校生、それも5人とも甲子園出場経験者だった。夢のある“育成ストーリー”とも言えるが、こんな声も聞かれた。
「1位の西純矢も、一軍定着までに3年はかかりそう。慌てて一軍昇格させず、二軍でしっかり育てたい逸材です」(同)
ドラ1が一軍戦力になるまで3年…。つまり、あと2年の契約を残す矢野監督は彼らの活躍を見ることができない可能性が高い。チームの将来を最優先させたドラフトは否定できないが、とはいえ、今季の538得点は12球団最少。防御率3・46は12球団トップだが、西勇輝に続く先発投手が青柳晃洋の9勝、ガルシア6勝という体たらく。メッセンジャーは引退し、藤浪晋太郎は二軍での投球も心もとない。FA市場を静観するのなら、「投打ともに強力な外国人を!」というのが、矢野監督の本音だ。
「今季途中にソラーテを獲得しましたが、本命は別でした。8月にメジャー契約を切られ、ブルワーズのマイナーに拾われたタイラー・オースティンと、ブレーブスのアダム・デュバル、ホワイトソックスのマット・スコールです。彼らはいずれも長距離砲ですが、なぜか途中でソラーテに変わったんです。でも、彼らとの交渉ルートはまだ生きているはず」(特派記者)
獲り損ねた選手との再交渉では一抹の不安も残る。今秋獲得した金の卵たちが、矢野監督の下で輝くのを願うばかりだ。