「ゴジラが日本に復帰するにあたり、最大のネックとなっていたのが、大リーグの年金制度です。巨人に10年、メジャーで通算9年。ここに悩みがあった。大リーグ機構では10季メジャーでプレーすると、年金の満額受給資格が得られる。毎年2000万円超が約束され、それが死ぬまで保証されるのです。恩師でもある長嶋茂雄氏から巨人復帰を誘われても逡巡したのはそのためです。だから3月末のメジャー各球団の25人の出場選手登録(ロースター)まで待って移籍先を探っていた。結局、何ら進展しなかったことで、一気に行動を起こしたのが星野監督なのです」(スポーツ紙のベテランデスク)
10年目のメジャーに備えて米国内で調整するなら、「それまでの間、日本に戻って楽天でプレーしてはどうか? 『いずれそのとき』が来たらいつでも米球界へ戻す」という、レンタル移籍の提案である。
楽天からすればDeNAの鼻を明かすことができる上、観客の大幅動員増にもつながる。松井からしても巨人、阪神、横浜といったセ・リーグには義理があり、どのユニホームを着ても禍根を残す。その点、パの楽天、それも一時避難の入団なら支障は少ない。
実現すれば、急転直下のウルトラCだが、問題は取引材料となる肝心要の“移籍先”だろう。
米球界事情に詳しい放送関係者はこう語る。
「実を言えば、松井の移籍先はロサンゼルスドジャースに決まっています。メジャー契約をできないのは、あちら側に事情があるから。ドジャースは昨年6月に球団の売却が決まり、現在いくつかの投資家グループが買収を申し出ている。自身の離婚に端を発して、現オーナー・マッコート氏の破産が宣告されたのですが、離婚問題が解決するまで勝手に財産を処分できなくなった。大リーグ野球機構も当面の間、ドジャースに対してFA補強の凍結を命じているから、アスレチックスからFA宣言した松井も獲得できない。つまり、球団の買い手が決まり、オーナー会議の承認を得るまで、松井とのメジャー契約は無理。4月末に売却先は決まる予定ですが、オーナー会議の承認には時間がかかり、早くて半年、場合によっては今シーズン一杯かかる。その間のレンタル移籍が浮上したのです」
星野監督は中日監督時代、ドジャースの当時のオーナーだったピーター・オマリー氏と昵懇の関係にあり、一緒にキャンプを張ったり、ユニホームもドジャースそっくりにした過去もある。その後、球団はオマリー一族の手からFOXグループを経て、マッコート氏の手に渡ったが、今回の競売でオマリー一族は韓国のアパレルブランド「イーブランド」とタイアップして買い戻しにでている。
この流れに乗れば、星野監督が松井を借り受けるのは容易だろう。
落札額は過去最高額となったシカゴ・カブス('09年の約650億円)を上回る1000億円超が予想されるドジャースだが、買収先は他にもある。松井が在籍していたヤンキースの当時の監督で、ドジャースの監督も務めたジョー・トーリ氏らの投資家グループもその一つだ。
さらには松井の代理人を務めるアーン・テレム氏も投資家グループを束ねており、優力視されている。むろん、松井自身もそれは知っている。
もはや松井のドジャース入りは規定路線。しかも、ドジャースの監督はヤンキース時代の打撃コーチだったマッティングリー氏で「左翼のポジションを開けて待っている」状況だ。だからこそ、松井はこのオフ、テレム氏に文句も言わず、涼しい顔で守備練習をこなしてきたのだ。