阪神のスター選手だった新庄氏が11月12日に更新した自身のインスタグラムで、まさかの現役復帰の意向を表明。その真意を巡り様々な憶測が飛び交っている。
5歳年上の清原氏が「ワールドトライアウト」の監督として現場復帰したことに触発されたと説明する新庄氏。これに、気の早い虎ファンは「ガチで新庄タイガース見たい」、「これがホンマの超変革」などとネットに書き込み、阪神復帰に大きな期待を寄せている。
新庄氏は現在、インドネシアのバリ島暮らし。モトクロスのプロになることを目標に、日夜、練習に励んでおり、野球とは縁がない。それでも「守備は世界一の自信がある。問題は目の衰え」と分析。今後は3カ月走り込んで体力を付け、「日本に戻ってバッティングセンターで180キロくらいのボールを打ち込めば戻る」と工程表も示し、清原氏が主導する来秋のワールドトライアウトに挑戦、という考えを公表している。
「元プロ野球選手は、ワールドトライアウトの年齢制限(27歳以下)から除外されてはいるものの、13年ものブランクを考えれば、現役選手復帰は現実的ではない。新庄氏が目指しているのは、実は『監督』としての復帰。巨人と並ぶ伝統球団の阪神だが、有力な生え抜き監督の候補者が不在。そこでOB会に『新庄監督擁立』の動きが浮上し、勢力を強めているようだ」(スポーツ紙デスク)
近年の阪神ベンチは、中日OBに乗っ取られた感が否めない。今オフのコーチ改造では、矢野燿大監督(50)の古巣である“中日人脈”がさらに加速した。
打撃コーチに中日OBの井上一樹氏が就任したのをはじめ、新井良太二軍打撃コーチが一軍に昇格。投手部門にも、中日で通算219勝を挙げた山本昌氏、4年連続開幕投手を務めた元エースの今中慎二氏の招聘も検討されたが、さすがにOBの反発が強く断念した。
それでも矢野監督は山本氏を秋季キャンプの臨時コーチに招き、迷える藤浪晋太郎投手の指導を依頼。山本氏は、中日のエースとして活躍した川上憲伸投手の代名詞であるカットボールを伝授した。
タイガースOBからすれば、これだけでも胸くそ悪いはずだが、清水雅治ヘッドコーチ、久慈照嘉内野守備走塁も中日OB(阪神→中日)で、主砲の福留孝介外野手もまたしかり。昨年、金本知憲監督の解任に伴い番頭格だった矢野氏に再建を託し、ベンチの軒下を貸したはいいが、そのまま乗っ取られてしまったのが実情なのだ。
「プロ野球の地上波のテレビ放映が激減し、大手テレビ局の解説者やスポーツ紙の評論家にありつくのが大変な時代です。阪神OBにとってセカンドキャリアの頼みの綱は古巣のコーチ就任なのですが、中日OBに支配され、不満があふれています。打開するには、生え抜き監督の擁立しかありません。そこに突如、現れた救世主が新庄氏なのです」(阪神OBの野球解説者)
次期監督は、安藤統男元監督を中心とするOB会主流派が担ぐ掛布雅之氏が有力だった。しかし、掛布氏は、今季でオーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザーから退任し、次期監督争いから脱落。ファンは岡田彰布元監督の復帰に期待を寄せるが、こちらは吉田義男元監督を中心とする反主流派に所属。平田勝男二軍監督は地味な上に矢野監督と良好な関係にあり、主流派が望む陣容一変は望むべくもない。
「球団は、看板選手の鳥谷敬内野手を引退させ、将来の監督を念頭に巨人の阿部慎之助のようにコーチ修行させる構想でしたが、鳥谷が現役続投にこだわり退団が決定。そこで川藤幸三OB会長ら主流派が、掛布氏に代わる新たな神輿に期待したのが、一匹狼で組織とは無縁の新庄氏という構図です」(阪神球団関係者)
広島出身の金本監督時代同様、中日OBらが陣頭指揮を執る現状に、新庄氏も「よそのチームの人が阪神の監督になるのは不思議」と訴えている。これに全国の虎ファンが「そうだ、そうだ」と大合唱し、勢いを増しているのである。
阪神でキャリアをスタートさせ、FA権を行使して大リーグに挑戦、NYメッツの4番打者としてもチームに貢献し、SFジャイアンツでは日本人選手として初のワールドシリーズ出場を果たした新庄氏。
そんなスターに球団首脳は「タイガース時代から人気は桁違い。野球を盛り上げてくれていいんじゃないか」とエールを送るが、こちらは背広組。つまり“営業部長”としての期待である。想定外の監督復帰には懸念する声が多いものの、ファンの要望とOB会のバックアップがあれば、むげには出来ないはずだ。