社会 2025年07月14日 09時00分
マンション老朽化と住民高齢化で管理組合の運営が困難に・・・大規模修繕できない悪循環
東京都心でタワーマンションが増える一方、全国では老朽化するマンションが増えている。国土交通省によれば、築40年以上のマンションは今後20年で3.4倍に増える見通しだ。現在、築40年以上のマンションでは、既に世帯主の半数以上が70歳以上になっている。マンションは今、「建物の老朽化」と「住民の高齢化」という“2つの老い”に直面している。この“2つの老い”はマンション管理に大きな影響を与えており、9日放送のテレビ朝日「モーニングショー」では、この社会問題を取り上げた。マンション住民らは体力や気力の問題、病気や介護といった理由から、理事会や総会への参加など管理活動に積極的に関わる人が減り、役員の担い手確保も困難になっている。マンション全体の意思決定が停滞し、管理組合の機能不全へと陥る。 建物の資産価値を維持するために12~15年周期で行われるのが大規模修繕工事だが、これは住民らの積立金を基に実施される。人件費や建築資材の高騰などで、約37%のマンションで積立金が不足しているという。しかし、年金生活の高齢者にとって、修繕積立金の大幅値上げは経済的に大きな負担であり、費用増額に反対する声が多くなり、必要な修繕が先送りされがちになる。また、新しい設備への更新やバリアフリー化といった改修は、世代間のニーズの差から合意形成が難しくなることもある。「どうせ自分の代では住み替えを検討するから現状維持でよい」と考える現役世代の住民もいるだろう。管理組合での合意形成がますます難しくなってくる。大阪経済法科大学経済学部の米山秀隆教授は「高齢者は意欲を持って資産価値を維持するという段階ではない。高齢者が大半を占めてくると先行きが厳しい」と話す。これからのマンション購入者は、将来的な修繕とその先の解体という建物のライフサイクルまで責任を持って考える時代に入っている。ただ、この問題は全国一律ではない。都心や都会の駅近物件であれば、マンションを手放してもすぐに買い手がつく。つまり、資産価値は容易に維持されやすい。しかし、人口減少の激しい地方のマンションでは、すぐに問題が深刻化するだろう。番組では「マンション購入氷河期世代」についても指摘した。新築マンションを購入する年齢は、約77%が30~40代だ(国交省調べ:平均年齢39.9歳)。バブル期の1990年、マンション平均価格は35~39歳の平均年収の約11.5倍だった。2024年はこれが約12.5倍になっている。つまり、バブル期よりも今のほうがマンションを買いにくい状況になっているという。「戸建て」か「マンション」か、「新築」か「中古」か。住宅を巡る古くからあるテーマだが、今は在宅勤務(テレワーク)やリモートワークなどが一般化しており、住宅取得もその時々で柔軟に考えたほうがよさそうだ。